FASHION / NEWS

2021春夏パリメンズコレ、67ブランドがオンラインで発表!

オートクチュールに続いてオンラインで開催されたパリ・メンズコレクションは、67ブランドが5日間に渡ってプレゼンテーションムービーを公開した。今回は、さまざまなデジタル表現を駆使して独自の世界観を披露した6ブランドをピックアップ。アニメーションやアーティストとのコラボ、クリエーションの感触が伝わるボックスまで、ポジティブなメッセージにあふれていた。
ルイ・ヴィトン アトリエから冒険の旅へ。

Photo: Courtecy of LOUIS VUTTION

アニメーションと実写を組み合わせたショートフィルムを公開したルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)。創業者が最初に構えたアトリエ、アニエールから、運送業者が大きなボックスを運び出しコンテナトラックへ、さらに荷船に積まれセーヌ川を下っていく。コンテナにこっそり乗り込むのは「ズームとその仲間たち」と呼ばれるアニメーションのキャラクターたち。パリのさまざまな名所に現れては演奏したり踊ったりとハッピーな雰囲気が印象的だ。

「Message in a Bottle(瓶詰の手紙)」と題された21年春夏コレクションは、パリから上海へ航海する国際的なプロジェクトとして段階的に発表されるという。まずは8月6日(木)に上海でランウェイショーが開催され、ズームたちが実際にモデルの姿で登場する予定だ。メンズ アーティスティック・ディレクターのヴァージル・アブローの継続的なテーマである「少年時代」を表現し、子供の目線で見た世界を演出する。また発表されるコレクションはリサイクル素材を使用するなど、4種類のアップサイクリングがベースとなるという。今後の発表を随時チェックしてみて。

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ダブレット やさしさに満ちた着ぐるみベアの物語。

ダブレット(DOUBLET)が公開したのはショートフィルム「A VERY MERRY UNBIRTHDAY FOR YOU」。クリスマスが大好きなクマが、冬はすごく忙しいけど夏は暇だから、と特別じゃない日をお祝いしようというストーリーだ。クロシェで作られた着ぐるみベアが仕立てるのはステンカラーコートやプリント地のシャツ、ベア柄(ただし表からベアは見えない)セーター、ミニベア付きのTシャツ、エプロン、ソックスなど、ダブレットらしいユーモアのあるアイテム。

受け取った人は最初は怪訝そうにしながら、包みを開けるとみんな笑顔になり、その笑顔を見て着ぐるみベアも満足げだ。「なんでもない日おめでとう」というコレクションタイトルは、新型コロナウイルスや大雨など災害続きの今だからこそ、それがかけがえのないものであると感じる。ブランドのものづくりへの想いややさしさが画面からあふれる、見てるだけで笑顔になれるムービーだ。

※ダブレットの全ルックはこちらから。

メゾン ミハラヤスヒロ パペットが繰り広げるショーの1日。

「MORE OR LESS」と題したコレクションを発表したメゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA HASUHIRO)。可愛らしいパペットがメンズコレクションを見に行くという冒頭から、加工で顔を隠したモデルたちのバーチャルショーへと続く。何本もの袖で作られたシャツやアシンメトリーなスカート、数本のパンツを再構築したパンツ、複数のニットで構成されたセーターなど、独特のドッキング手法を用いた。何枚もの服が重なり完成したシルエットは、正面から見るディテールだけでなく別のアングルからも見たくなる。

またジャケットやコートなどのニュアンスのある色は、特殊なハンド吹きつけ技術によるもの。一点一点異なる風合いが魅力だ。ショーのフィナーレであいさつに登場するデザイナーも拍手を送るゲストもパペットなのだが、このパペットたちは1体1体アトリエスタッフが手作りし、人形の演技もスタッフがおこなったという。寂し気なラストはショーが開催できない今の状況を表しているのか、ファッションといううつろいやすいものへのメッセージか? 見る人によって解釈が異なりそうだ。

※メゾン ミハラ ヤスヒロの全ルックはこちらから。

ロエベ 直接触れる「Show in a box」からプロセスを紐解いて。

Photo: Courtecy of LOEWE

クリエイティブディレクターのジョナサン・アンダーソンが、コレクション「Show in a box」について語っている動画を発表したロエベ(LOEWE)。マルセル・デュシャンの「Museum in a box」にインスピレーションをうけ、M/M(Paris)監修のもと制作されたキャンバス地のアーカイブ・ボックスは、ショーに関するさまざまなコンテンツが収められている。例えば、ジョナサンからの手紙やショーのインスピレーション源となったブックレット、コレクションの全ルックが掲載されたミニブック、生地のスワッチ、ポップアップで組み立てられるミニチュアのショー会場など。オンラインで見るだけでなく、手で触って感じられるようにしており、キーとなるサークルトップスは型紙が付属しているので自作することもできる。

コレクションは肩から後ろ身頃にボリュームを出したコートやバルーンスリーブのトップスなど、ボリュームのあるシルエットが特徴的。レザーをバスケット上に編み上げたノースリーブトップや、日本の絞り染めを用いたケープなど、伝統技術を用いたアイテムも登場している。

※ロエベの全ルックはこちらから。

ディオール ガーナ出身のアーティストとコラボ。

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「昔からアフリカ人アーティストと仕事をしたいと思っていました」と語るのは、ディオール(DIOR) メンズアーティスティックディレクターのキム・ジョーンズ。自らも幼少期をボツワナ、タンザニア、エチオピア、ケニア、ガーナといったアフリカ諸国で過ごしており、キムにとってアフリカは人生を形成するイメージの源だ。今回コラボしたアーティスト、アモアコ・ボアフォは、ガーナ出身で現在はウィーンを拠点に活動している。

2部構成の動画は、前半はガーナにあるボアフォのアトリエでの制作風景や肖像画、キムのコメントを紹介し、後半はコレクションのプレゼンテーションだ。ミニマルなコート、アイビー柄のシャツにショートパンツ、リボンがついたボリュームシャツ、ボアフォの作品が描かれたプルオーバー、白いテイラードジャケットなど、シルエットの美しいルックが揃う。モノトーンやベージュなどのニュートラルカラーにイエローやピンク、ブルーといったタッチカラーが効いている。

※ディオールの全ルックはこちらから。

トム ブラウン モーゼス・サムニーが歌うオリンピック賛歌。

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毎シーズン、コンセプチュアルでシュールな世界観のランウェイショーを見せてくれるトム ブラウン(THOM BROWNE)だが、「monumental」と題された今回のオンラインコレクションは意外にも白黒フィルム。シンガーソングライターのモーゼス・サムニーが、その美しい上半身を見せながらオリンピック賛歌を歌うシンプルなものだ。モーゼスが着用している総スパンコールにサテンインターシャのストライプが施されたラップスカートは、1924年と1936年のオリンピックから着想を得たもので、スポーツにおけるマスキュリンとフェミニンのバランスを伝えている。

動画ではこのラップスカートしか披露されていないが、コレクションの全貌は10月初めに開催されるメンズとウィメンズ合同で正式発表されるランウェイで明らかになる予定だ。また、トム ブラウンとbeats by dr. dreが慈善団体へ寄付するためにリミテッドエディションのコラボをおこなうことも発表された。

不安な世の中にポジティブなメッセージを。

前回のメンズコレクションから社会全体が大きく変化したこの半年。今の状況についてメッセージを掲げるブランドもあった。ウーヨンミ(WOOYOUNGMI)は冒頭にダイバーシティや希望についてのメッセージを映し出し、ウォルター ヴァン ベイレンドンク(WALTER VAN BEIRENDONCK)はラストに「歴史から学ぶことで、我々は将来の災害を避けられる。ヒーローになれるんだ」といった長文のメッセージを発信。ボッター(BOTTER)も動画の1/3近くをブラックライブズマタームーブメントやダイバーシティについて語った。

商品が店頭に並ぶ来年にはデザイナーたちが発信したような希望に満ちた世界になっているだろうか。そうであってほしいと願いながら見たメンズコレクションだった。

Text: Yoko Era